保育士不足の原因や政府が行っている改善策、保育現場の現状についてわかりやすく解説してくれているサイトはないかな?
こういったうさぎ保育士の悩みに現役保育士の僕がお答えしていきます。
この記事を読むことで分かることはつぎの通りです。
- 保育士不足の原因
- 政府が行っている保育士確保政策の落とし穴
- 保育現場の現状
- 2020年現在の新卒保育士の動向
この記事の筆者は以下の通りです。
- 現役保育士
- 保育士歴4年
- 新卒採用&研修担当
保育現場で働いている経験や新卒採用のために大学や専門学校を訪問し、学生の生の声を聞いているので信頼度はかなり高いです。
では早速、保育士不足の原因について詳しく見ていきます。
保育士不足の原因16選
平成29年4月に厚生労働省から発表された保育士人材確保のための『魅力ある職場づくり』にむけてに紹介されている保育士不足の原因は16個あります。
現役保育士の声と保育士として働いていない有資格者の回答をわけて紹介します。
- 賃金が希望と合わない(47.5%)
- 責任の重さ・事故への不安(40%)
- 自身の健康・体力への不安(39.1%)
- 休暇が少ない・休暇が取りにくい(37%)
- 保護者との関係が難しい(19.6%)
- 子育てとの両立が難しい(14.9%)
- 将来への展望が見えない(8.6%)
- 教育・研修体制への不満(5.8%)
一方で保育士として働いていない有資格者の回答は次の8選です。
- 他職種への興味(43.1%)
- 就業時間が希望と合わない(26.5%)
- ブランクがあることへの不安(24.9%)
- 業務に対する社会的評価が低い(22.3%)
- 雇用形態が希望と合わない(10%)
- 仕事内容が合わない(9.2%)
- 有期雇用契約が更新されるか不安(4.8%)
- その他(18.9%)
不満だらけですね。
平成27年に発表された保育士等に関する関係資料では、職場の改善希望状況を調査しています。
改善案の中で改善されているのは今のところ賃金のみ。
保育士が求めている金額とは大きくかけ離れているので、保育士の不満は溜まる一方です。
さらに詳しく保育士不足の原因を見ていくことにします。
現役保育士が考える保育士不足の原因8選

まずは現役保育士の回答を解説していきます。
賃金が希望と合わない(47.5%)
現役保育士の約半数が希望賃金ではないと答えています。
つまり、保育士の給料が安すぎると訴えているのです。
参考までに保育士7年目の平均月収が約20万円です。
これは大卒の初任給とほぼ同等の賃金で、保育士がいかに安い賃金で働いているのかが理解できるかと思います。
詳しくは保育士の給料は安い!?【7年後に年収60万円の差がつく真実】で解説していますので参考にどうぞ。
責任の重さ・事故への不安(40%)
保育士は時代の流れと様々な役割を行うようになりました。
核家族化が進んだことにより、子育て相談を行う保育園も少なくありません。
保育士の仕事内容については保育所保育指針にしっかりと明記されています。
言い方を変えれば、仕事内容は増えたけど給料は変わらないというのが現状です。
子育て相談だけではなく
- 基本的生活習慣の獲得
- 集団行動における規則やルール
- 健康管理や安全に過ごす
家庭教育を保育現場で伝えるところまできています。
また、共働き世代の増加により保育園のニーズは高まり、保育士の疲労が溜まる一方です。
自身の健康・体力への不安(39.1%)
保育士の仕事量は増加しており、保育士の健康は害されています。
- 変動勤務による不規則な生活
- 休暇を思うように取れない職場環境
- 日々強くなる劣悪な人間関係
- モンスターペアレントとの戦い
- 持ち帰り仕事によるプライベートの喪失
- 上がらない給料に対するストレス
保育士は、自分の時間や生活を削って子どもたちの未来を明るくしています。
当然のことながら、精神はかなり追い詰められています。
休暇が少ない・休暇が取りにくい(37%)
先ほど少しお話ししましたが、保育士は休暇がほとんど取れません。
保育士が仕事を休めない大まかな理由
- 行事があるから休めない
- 仕事が終わってないからサービス残業
- 人手が足りないから休めない
- 有給休暇の期限が過ぎる
ブラック企業も顔負けのブラックさです。
言い換えれば保育園を利用している子どもたちはブラック企業に勤めていると言っても過言ではありません。
保育士として7年間働いた知り合いの退職理由に、サービス残業や休みが取りづらいが入っています。
詳しくは【保育士退職!】7年働いた元保育士が退職を決意した理由をご参照ください。
保育現場のリアルな声を聞くことができます。
保護者との関係が難しい(19.6%)
保育園にはさまざまな家庭環境の子どもたちが登園されています。
- 共働き世帯
- 片親(母子・父子家庭)世帯
- 祖父母世帯
また両親の年齢層も幅広くなってきています。
上記のような背景の中で保育士に求められるのは、時代背景に合った保育設定や保護者とのコミュニケーション能力です。
20代の親と40代の親では考え方が全く違います。
さらに言うと、共働き世帯と片親世帯でも価値観は異なります。
こういった時代の波に保育士は苦しめられています。
子育てとの両立が難しい(14.9%)
保育士の業務は多岐にわたります。
保育士等に関する関係資料に保育士の主な業務内容が掲載されています。
この表で紹介されている業務はほんの一部です。
遠足の時期であれば、計画や下見を行います。
運動会の時期であれば、発表を考え準備をしなくてはなりません。
給食を食べる以外ほとんど休むことなく働き、家に帰ってもサービス残業が続きます。
保育士が子育てをしながら仕事をするのは不可能です。
将来への展望が見えない(8.6%)
人生で最も給料が貰える年齢が50~54歳です。
大卒・大学院卒の50~54歳の平均月収は約40万円になっています。
一方で、保育士の50~54歳の平均月収は約25万円です。
そもそも月収25万円では社会保険や年金、税金を引かれると手取りで20万円ありません。
老後の備えはできず生活するだけで精一杯ですし、子育てもできません。
仮に子育てが終わったとしても、孫にプレゼントを買ってあげる余裕すらありません。
教育・研修体制への不満(5.8%)
新卒保育士が初めて勤務する時、主任保育士や研修担当の保育士が1対1で教えてくれるわけではありません。
保育業界の教育方針『保育を行いながら見て学ぶ』です。
さらに質問をしたくても質問がしにくいオーラを出し、質問をしないことを怒られます。
完全な新人いびりです。
研修制度も自分が休みの日に無給で研修を受けます。
勿論、変わりの休みなど貰えません。
3年間、研修のために休みを削られ昇級される金額が5,000円です。
しかも確定ではなく、役職を貰えることにより昇給されます。
つまり、役職が埋まっていれば研修のために使った休みは無駄になるのです。
結果として保育士不足になるのは必然と言えます。
保育士資格を持っていながら保育士として働かない理由8選

次は保育士資格を持っていながら保育士として働かない理由をみていきます。
この理由は、保育分野における保育士不足の現状を参考にしています。
他職種への興味(43.1%)
保育士として働いていると自由を求めて求人情報を調べます。
すると保育士よりも好待遇な条件がたくさんあります。
保育士が好待遇と感じる求人例
- 土日祝が休み
- 有給取得率100%
- 月給20万円以上
- 残業なし
- サービス残業なし
- 残業代支給
ほんの一例ですが、保育士をしていると上記の条件がとても魅力的に感じます。
私なんて手取り15万円でサービス残業をし、持ち帰りの仕事もたくさんあるわ。
友だちと買い物なんて保育士になってから1回もしていないわ。
こういった悩みは他業種に転職することで解決されます。
- 友だちと休みを満喫できる
- 自由な時間を楽しめる
- かわいい洋服を買える
- 甘いスイーツを食べに行ける
- 連休を取って旅行に行ける
他業種転職には、保育士では不可能だったことが全部できるようになるのです。
以下の転職サイトは豊富な求人情報の中からあなたの価値観にあった職場探しができるサイトです。
理想の生活を実現するために転職サイトを利用しない手はないですよ。
チャンスは待っていてもきません。
チャンスを掴むためには行動するしかないのです。
就業時間が希望と合わない(26.5%)
保育士を辞める人は大きく2パターンに分けることができます。
- 保育士に絶望して辞めるパターン
- 結婚・出産で辞めるパターン
特に結婚・出産で辞めるパターンでは、家庭を持つので就業時間に縛りができます。
つまり、7:00~19:00までの変動時間で働いている場合ではないのです。
さらに休みも取りづらいので、保育園以外での就労になってしまいます。
ブランクがあることへの不安(24.9%)
保育現場は日々変化しています。
- 保育園に通う子どもたち
- 保護者のニーズ
- 働いている保育士の変化
- 保育士の仕事が増えている
ブランクがある保育士さんの気持ちはこんな感じ。
特に子どもが小学生になったのをきっかけに保育現場に復帰すると印象が大きく変わっていることに戸惑います。
ブランクが長ければ長いほど、不安は大きくなります。
業務に対する社会的評価が低い(22.3%)
保育士の仕事内容は保育所保育指針に明記されています。
代表的なものを紹介すると以下の通り。
- 生命の保持
- 情緒の安定
- 保育環境の整備
- 保育方法
- 保育計画及び評価
- 5領域
上記の項目に沿って保育を行い、1人の人間として自立できるように基盤を作っていきます。
言い方を変えれば、保育士1人で30人の子育てをしていると言えます。
一方、保育士1人で30人の子どもの人生基盤を作っているにもかかわらず、月収20万円です。
保育士の業務に対する社会的評価が低いと言うのは紛れもない事実です。
ビックダディでも2人で10人前後でした。
雇用形態が希望と合わない(10%)
家庭環境や保育園側の事情によって雇用形態が安定しません。
例えば、小さな子どもがいて休みやすい保育士を正社員で雇用すると他の保育士に負担がかかります。
その結果、保育現場の人間関係に大きな溝ができてしまいます。
本来であれば、家庭環境や保育園側の事情によって雇用形態を変更することはよくあります。
しかし保育現場で求められているのは、時間に縛りがない保育士です。
仕事内容が合わない(9.2%)
繰り返しになりますが保育士の仕事は、子どもと遊ぶだけではありません。
事務作業や制作準備、保護者対応、発表会の準備など多岐にわたります。
有期雇用契約が更新されるか不安(4.8%)
保育士が育休や産休を取得する場合、代わりとなる保育士を配置しなくてはいけません。
育休・産休から復帰すると保育士が1名戻ってきますから、代わりの保育士の雇用形態は非正規や派遣雇用になる確率が高くなります。
このように、保育士だからといって安定して仕事ができるというわけではないのです。
その他(18.9%)
その他にも
- 子どもにもっと愛情を注いであげたい
- 保育士同士の人間関係
など、保育士によって不満に感じていることはたくさんあります。
『社会人なんだから甘えるな』と言われたらそれまでですが、一般企業よりも過酷な状況で仕事をしていることを理解してほしいです。
保育士不足改善政策【効果がありません】

深刻化する待機児童問題や保育士不足の解決案として、政府は次のような政策を進めています。
- 短時間正社員制度
- 処遇改善手当
参考:保育士等に関する関係資料
しかし保育士不足改善に向けた政策は現場保育士のニーズを捉えることができず、効果はありません。
その理由を解説していきます。
保育現場の現状【変化が見られない理由】

保育士不足改善のために『短時間正社員制度』『処遇改善手当』を導入しています。
しかし、保育士不足が改善される兆しはありません。
保育園に在籍する保育士の人数は常にギリギリ。
求人を出しても人は集まらず、保育士が1人休むだけで負担は増え、ストレスが溜まる日々を過ごしています。
政府の政策は保育現場の本質を見抜けていません。
だから、いつまでたっても保育士不足が解消されないのです。
保育現場は短時間正社員がほしいのではなく自分の時間がほしい
保育現場は時短社員を求めているわけではありません。
たくさんの保育士を雇用し、1日しっかりと休むことができる環境を求めています。
要するにフルタイムで働き、他の保育士と同じように働くことができる人材を求めています。
時短社員は、自分の都合で勤務時間を決めて休むことができます。
一方で現職の保育士は、時短社員の尻拭いをしないといけない可能性があります。
つまり、仕事が増えてやっかいとさえ思っています。
一般企業と同じように
- 有給が取れる
- 持ち帰りの仕事がない
- 休日出勤しなくていい
- サービス残業がない
当たり前の環境で働きたいと常に願っています。
処遇改善手当が支給されて大卒初任給と同じ
処遇改善手当は保育士の給料改善、キャリア形成の仕組みづくりのために導入されました。
しかし処遇改善手当を貰うことができて、やっと大卒初任給と同じ給料になります。
保育現場の保育士はかなり絶望しています。
しかも処遇改善手当の上限を貰うことができたら、そこからの給料アップはほとんど見込めません。
保育士のほとんどは給料が安いことに不満を抱えていますが、お金に固執しているわけではありません。
保育士という仕事に対する社会的評価や対価が低いことに不満を抱えています。
1人で子ども30人を怪我させることなく育ててみてください。
まず不可能ですし、仮にできてもその子育てに対する社会的評価や対価は月給20万円前後です。
処遇改善手当については、保育士は処遇改善手当で給料アップ!?待遇は改善されるのかで詳しく解説しています。
新卒保育士のリアルな声【やりがいよりもプライベートが優先】

新卒保育士の採用や研修の経験、知り合い保育士との会話、学生時代の就活話から話を進めていきます。
保育士養成校を卒業する学生の約半数が保育園以外に就職します。
データからも証明されている紛れもない事実です。
新卒保育士が保育園に就職しない大きな理由は次の通りです。
- 休みがない
- 自分の時間が取れない
- 給料が安い
新卒保育士は実習経験やアルバイト、ボランティア活動を通して自分らしい人生が送れるかを定めています。
その結果、『保育園への就職は最終手段』と考える学生が増えています。
さらに、新卒保育士の約半数は奨学金の返済があります。
保育士の安い月給で奨学金を返済しつつ、自分らしい生活を送ることは不可能です。
つまり、2020年現在の若い世代は仕事のやりがいよりプライベートを充実させたいと考えています。
結婚に消極的で残業を嫌い、定時で帰れてそれなりに給料が貰える会社に就職することが重要なのです。
ようするに保育園就職は、若い世代の希望をどれも満たしていないのです。
しかし、新卒保育士の約半数は別の業界に就職しています。
この事実をしっかりと理解し対策を練らない限り、保育業界はドンドン悪くなります。
ちなみに若い世代の保育士は離職率がかなり高くなっています。
詳しくは、【悲しい現実】保育士の離職率から分かる保育業界の闇を参考にどうぞ。
【結論】保育業界の未来は明るくない

どの業界も若い世代が活躍できなければ発展はありません。
しかし保育業界は、若い世代の働き手が少なく、どんどん辞めているのが現状です。
こう言った現状を踏まえて、保育業界の未来は明るくないと断言します。
2020年現在は保育士不足かもしれませんが、少子高齢化が進めば子どもの人数はさらに減っていきます。
その結果、保育士が必要なくなる日はくるかもしれません。
保育士として働くだけでなく、保育士以外のスキルを磨くことも今の保育士には必要なことなのかもしれません。